ここに並んでいる品は、すべてすでに手を離れています。売り物ではありません。1993年の創業以来、当店を通っていったヴィンテージ衣類の記録です。
集めたものではなく、仕入れて、売ったものです。アメリカへ100回を超える買い付けに行き、倉庫の底から掘り出し、値をつけ、次の持ち主へ渡してきました。持ち主は変わっていきますが、通した人間は変わりません。その記録として残しています。
各点には、何を見てその年代と判断したかを書いていきます。タグの表記、刻印、縫製の仕様。写真では分からない部分こそが、この仕事の中身です。同じものをお持ちの方の役に立てば幸いです。
最初にアメリカへ買い付けに行くとき、どこへ行くかを自分で決めなければなりませんでした。考えたのはゴールドラッシュの土地です。人が集まった場所には古いものが残っているはずだと。それでカリフォルニア州の州都、サクラメントを選びました。
行ってみると、案の定かなり大きなフリーマーケットがありました。ディーラーが何人もいて、スリフトストアも数多くある。古着もヴィンテージも出てくる、良い市場でした。ただ、遠かった。サンフランシスコに降りてから車で3時間から4時間。最初の4、5年は通いましたが、他にないかと考えてポートランドを思いつき、そちらへ移りました。
その後は、オレゴン州ポートランドと、ロサンゼルスのローズボウルに集まる業者が中心になります。
ローズボウルの朝は、一般の開場より何時間も前に始まります。市が開くのは6時ですが、業者の車は午前1時頃から場外に列を作ります。取引はその列のなかで済んでしまう。車から車へ、荷を開けて、値を決めて、積み替える。
6時に一般のお客さんが入ってくる頃には、こちらの仕事は終わっています。ビールを飲んで、車のなかで昼寝をしていました。10時には引き上げて、昼食です。会場に並んだ品を見て回ったことは、ほとんどありません。
ここに並んでいる品の多くは、そういう朝を何十回も繰り返して日本へ持ち帰ったものです。
第一次世界大戦の前後。木綿と羊毛だけで作られていた時代の衣類です。
リベット、革パッチ、シンチバック。今日ヴィンテージデニムと呼ばれるものの原型が、まだ現役の作業着だった時代です。
大恐慌の時代。作業着が消耗品として作られ、丈夫さだけが求められました。
第二次世界大戦。物資統制のもとで仕様が簡略化され、その省略の跡が今では年代判定の手がかりになります。




















戦後のアメリカ。軍から民間へ、作業着から街の服へ。当店が扱ってきた品の最も厚い層です。


















































既製服の量産が完成した時代。同時に、手のかかった仕様が次々に姿を消していきます。

















素材が化学繊維へ移り、生産が国外へ出ていく直前の時期です。
アメリカ製が当たり前ではなくなっていく時代。この年代を境に、作りが変わります。
量産と海外生産が定着した時代。それでもこの年代にしかない図案と作りがあります。
いま、古着の買取業者はいくらでもあります。ただ、店によっては買った値段の10分の1で引き取られることもある。手放す側からすれば、辛い話です。
その結果、市場に出てくるのは「もう手元になくてもいい」品ばかりになります。本当に良いものは、持っている人が手放さない。当然です。その値段では出す気になりません。
TRADE は買い取る場所ではありません。売り手と買い手が直接つながる場です。値段は売り手が決めます。手数料は合計2.9%。一般的なフリマサイトやオークションの約10%と比べて、売り手の手元に残る額が違います。偽物なし、転載画像なし、値引き交渉なし。
ここに並んでいる記録は、そのための目を養ってきた30年分です。
TRADE