
1930年代のカバーオール、チンストラップとチェンジボタンを備えた個体です。すでに手を離れており、当店を通っていった記録として掲載しています。
大切なのは、これらが「一つでも当てはまれば戦前」ではないという点です。後年に部品だけ入れ替えられた個体があります。全体の仕様が同じ年代でそろっているかを見ます。生地の重さと手触りは、写真では分かりません。
カバーオールは、上下がつながった、あるいは上半身を覆う形の作業着です。鉄道、農場、工場。着る人が擦り切れるまで着て、破れれば当て布をして着続けるものでした。
チェンジボタンという仕様は、その前提から生まれています。ボタンは作業のなかで最初に壊れる部分です。縫い付けてあれば針と糸が要りますが、打ち込み式なら現場で押し込むだけで直る。長く着せるための工夫です。
胸や背に文字が入った個体は、支給品であることが多くあります。鉄道会社、鉱山、工場。会社が従業員に配ったものです。買った服ではなく、渡された服。だからこそ、その組織の名前がそのまま残ります。
チンストラップとチェンジボタンが両方そろった個体は、年々見かけなくなっています。どちらも後年に省略された仕様で、残っていること自体が年代の証明になります。
買い付けの場所は、カリフォルニア州サクラメント、サンフランシスコ、オレゴン州ポートランド、そしてロサンゼルスのローズボウルに集まる業者からでした。ローズボウルの市が開くのは6時ですが、業者の車は午前1時頃から場外に列を作ります。取引はその列のなかで済んでしまう。6時に一般のお客さんが入ってくる頃には仕事が終わっていました。
※ この個体を具体的にどこで手に入れたかは、追って記載します。
いま、古着の買取業者はいくらでもあります。ただ、店によっては買った値段の10分の1で引き取られることもある。その結果、市場に出てくるのは「もう手元になくてもいい」品ばかりになり、本当に良いものは持っている人が手放しません。
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